ライトノベル 扉の外 レビュー

扉の外 タイトル 扉の外
著者 土橋真二郎
イラスト 白身魚
出版 電撃
発売日 2007年2月


執筆者:jade 評価:
主人公は2年4組に所属する千葉紀之。
修学旅行に行くはずだったが目を覚ましたとき、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。
訳もわからず呆然とする一行の前に、“人工知能ソフィア” を名乗る存在が現れ、絶対の “ルール”が示される。
天邪鬼な性格の彼は、ルールを拒み、集団から孤立するのですが、閉鎖空間で秩序を乱した人間が煙たがられるのは火を見るよりも明らか。
次第にクラスメイトから露骨に悪意を向けられるようになった彼は、扉の“外”へ逃げ出します。
そこで彼は、幼なじみである2年6組の蒼井典子と再会し、1〜8組まである二年生すべてのクラスが、同じ環境におかれていること、そして、2年のクラス全てが、よりよい待遇を得るために他のクラスを侵略するゲームに組み込まれていることを知って───
第13回 電撃小説大賞<金賞>受賞作。

修学旅行中にクラス単位で誘拐・軟禁され、腕輪の装着を義務付けられたうえで、他人を蹴落とすゲームをするという設定は、『バトル・ロワイアル』を彷彿とさせますが、この作品は、誰がどのようにして勝ち残るかというゲーム的な部分に重点を置くのではなく、最初から最後まで一貫して人間の内面を描くことに力を入れており、アプローチはまるで違います。
ただし、人間の内面を描くと言っても、綺麗な面は一切合切否定した性悪説に立っており、人間が持つ汚い部分の感情を肯定するネガティブな文章のオンパレード。
ティーンズノベルらしからぬ内容の問題作という意味では、似通っているかもしれませんね。
いやはや、実に私好みの作品でした。

嫉妬や蔑視、優越感など負の感情が渦巻く中、ただ一人、一貫して善人として描かれているのが、2年1組所属の正樹愛美。
常に笑顔を振りまき、博愛精神溢れる言動を取る彼女は、まさに学園の女神の名に相応しい女性と言えるでしょう。
正論を振りかざし指図する和泉玲子、和泉に嫉妬の炎を燃やす大野亜美、クラスメイトを密かに支配する腹黒な蒼井典子など、他のヒロインたちは一癖も二癖もある人物ばかりですから、彼女の姿は非常に目立ちますね。

異質な存在として。

いや、こんな異常な状況下でここまで模範的な行動を取られると、胡散臭いこと、この上ないんですよね。
和泉・亜美・典子は、作中で醜く浅ましい姿を晒していますが、その方が人間らしくて、よっぽど好ましく感じられますよ。
1,2巻では正樹の内面が暴かれることはなかったので、化けの皮が剥がれるときがくるのが非常に楽しみだったりします(笑

先が気になるストーリー展開、人間臭さを前面に押し出したキャラ、そしてネガティブな感情を見事に描いた描写力。
どれをとっても金賞の名に恥じない作品だったと思います。

ただ、惜しむらくはラストが中途半端だったこと。
この話をどうやってまとめるのか期待して読み進めていただけに、唐突な幕切れには肩透かしを食らった気分になりました。
シリーズ化前提の作品とはいえ、もう少し上手く風呂敷をたたんでほしかったなぁ…

ラストが納得いかなかったとはいえ、人間が持つ醜い部分をこれでもかというくらい前面に押し出した心理描写は見事の一言。
まだまだ文章自体は稚拙な部分が目立つものの、それゆえに成長の余地が感じられるので、先々が非常に楽しみな作家だと思います。


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